北海道教育委員会は、令和7年(2025年)3月18日付で「懲戒処分の指針」を改訂し、以下の項目を付け加えました。

SNS等を使用した児童生徒との私的なやり取り
管理職員の承認を受けることなく、SNS(注) 、メール、電話等を使用し、児童生徒と私的なやり取りを行った場合…戒告

 不適切な事案に対してでは無く、やり取りを行ったことをもって懲戒処分の対象としたことは全国的にも極めて異例のことです。確かに、教職員によるわいせつ行為は決して許されるものではなく、児童生徒を守るための対策は必要ですが、目的に対して行政の説明責任に重きを置くものです。

 さらに、各教育機関に発出した教育長通知では「懲戒処分の指針」を逸脱・拡大解釈すると思われる取り扱いが、「別紙1」に以下の様に記載されています。

SNS等による児童生徒との私的なやり取りについて
(1)卒業生や他校の児童生徒であっても、恋愛目的などと考えられ得る内容で、SNS等によるやり取りを行った場合は、懲戒処分の対象となること。
(2)管理職員の許可なく、SNS等により自校の児童生徒に対し、教科指導や進路指導などの校務で行った場合も懲戒処分の対象となること。
(3)SNS等には、SNS、メール、電話のほか、学校において禁止されている児童生徒との直接のやり取り(手紙など)を含むこと。
(4)管理職員は、所属職員から児童生徒に対しSNS等によるやり取りを行いたい旨の申出があった場合は、必要性、緊急性のほか、複数の児童生徒に対して行うものであるかなどを考慮の上、承認することとし、承認する場合は、SNS等によるやり取りを校長、教頭や他の教職員と共有すること。
また、管理職員が年度当初に一括承認した場合は、適宜、SNS等による児童生徒とのやり取り内容を確認すること。
 なお、承認に当たり、個別の判断を要する場合は、当係あて照会すること

(5)SNS等による児童生徒との私的なやり取りの禁止については、教職員はもとより、保護者に対しても共通理解が得られるよう周知すること。

 教育委員会決定である懲戒指針では、「児童生徒との私的なやりとり」を懲戒処分の対象にしていますが、「別紙1」にある「卒業生」は「児童生徒」には当たらず、「教科指導・進路指導など校務上のやりとり」が「私的なやりとり」に当たらないことは自明です。教育長通知が教育委員会決定である懲戒指針を実質的に拡大する形となっており、「何が懲戒処分の対象になるか」が、際限なく拡大ができることになってしまいます。
 一方、学校では毎日毎日、わいせつ事案とはまったく無縁の児童生徒・保護者と教職員のやりとりが、さまざまな方法で行われています。それは「子どもの教育が教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じて」行われる(旭川学テ最高裁判決)という、教育の本質にもとづく必然的な行為です。

 管理職による一括承認や内容確認の義務化、共有化は、教育現場における過剰な監視体制の助長となり、教職員と児童生徒間の信頼関係を損なう結果にもつながります。また、管理職に実質的に不可能な業務と責任を押しつけ、任命権者としての道教委の責任を回避するものでしかありません。  

 教育の本質にも関わる「教師と子どもとの間の直接の人格的接触」と教職員の人権を守るためにも、少なくとも教育長通知の「別紙1」の速やかな見直し・修正を求めます。  

 全文はこちら ⇒  懲戒処分指針の改正 要求書