1か月前、H先生から講師の依頼があった。校則について学ぶ学習会をしたいから、そもそも校則って何なのかを学びたいという内容だった。この1年間、校則に向き合ってきたから、少し教科書的になるかもしれないが即答でOKした。若い先生から頼まれるってめちゃくちゃ嬉しい。
行きは公共交通機関でいくことにしていたが、自分をいたわって飛行機を選択。人生で一度体験した方がいいと思うほどの北海道の山並みを堪能した。空港には会を企画したHさんが迎えに来てくれて一緒にランチ。これも美味かった。
自分の発表は、お題がすでに与えられていた。「そもそも校則とは何か」。これまでの学習会で関わった弁護士さん(札幌弁護士会の桝井さん、福岡の弁護士さんの佐川さん)の資料をお借りして作った。校則の歴史、世界の校則、校則に関する裁判事例、弁護士さんが語る校則と子どもの権利条約。そして私たちの学び。そんな話をした。会には、O高校のOさんもいらっしゃっていた。誰も質問はなかったのでつまらない話だったのかと思いかけたが、Oさんが質問してくれた。今の話の中では保護者があまり出てこなかったが、保護者が「きちんと規則を守らせてくれ」と意見があって難しさを感じるとのことだった。さすがにオープンに語り合う気持ちのある人は違う。保護者が管理的な思考に縛られているのが日本の現実。特に田舎に行けば行くほどその傾向は強いかもしれない。ボクは生徒に自主的に考えさせるときにも得てして管理的思考に陥る傾向があることを指摘し、三者協議会はそれを突破した取り組みであったことも話をした。答えにはならんかもしれないが、価値観は変えるものではなく、変わって行くもの。粘り強い取り組みと仕掛け。職員の意識変革と語り合いが必要だと思う。
次にH高校のサウザー(北斗の拳に出てくる南斗六聖拳の凄い人)の実践。最初の語りも引き付けられる面白いものだった。さすがだ。ボクがあいさつで見えている地形の話をしたので、その流れを受けて、そこでの交通事故や、怖い人ちゃんに絡まれたエピソードから始まった。しかし、高校現場の働き方改革の深刻な実態も話してくれた。毎日働き方改革だと言って、変化を命じられ10分早く帰れと言われる。落ち着いて仕事をしたいという教員に教頭はじゃあ10分早く来いという。ひどい話だ。レポート発表は高生研のエキスが詰まった素晴らしい実践だ。「学級開き」がまず素晴らしい。と同時に入学最初に配らなくてはいけない大量の配布物は21種類、教材が冊子3冊と自分の配る学級通信だったそうだ。きっとサウザーは自分の学級通信の話だけをしたいのだと思うが、大量に伝達文書がある。リーダーづくりとその方針はさすがだった。生徒の特徴とエピソードが詳細に記録される高生研方式。これだけを餌に半日は語れる。
終わっての質問はまずOさん。帰りに私は教育のシロウトですからとおっしゃっていたが、さすがの質問だった。生徒総会での話。サウザーのクラスが議論の末全会一致で出した要求が、「お金のかかるものは生徒会の範疇ではない」と全クラスの代議員会で採択されなかったという話だ。まるで「お金が無いので国に要求してまいる」しか言わないDo教委のような対応だが、そこに質問があった。「どうして却下されたのか、どういう仕組みで却下されているのかを知りたい。」ということだった。はっきりとしているのは生徒会長がそのように仕切ったという事だが、生徒会担当教員の考えのようだ。生徒会は何のために存在しているのかを理解していないとこうした対応には良くなるだろう。多くの学校がそうなっている。ちなみにボクは生徒会部長として、どうやったらクラスの要求が生徒総会で提案されてそれが実現するかに努力してきた。予算に関わることだけに質問を絞り、シャンシャンで終わる。そんな手続きだけの生徒総会を生徒の要求があふれるものにしてきた。しかし、ここでの悩みは、教員集団が学級での討議をどのようにしていくかのノウハウがまるでないことだった。まるで生徒個人の意見が学級の意見として上がってくる。
今回の話はその逆。学級でとことん議論したことがあっさり却下されたら学級リーダーはしょげ返る。学級づくりとともに職場づくりが同時に行われないと難しいが、今の職場にそんな雰囲気は漂いそうにない。
ボクも質問した。すごく気になる女子生徒をどう扱うか、どうなってほしいかという質問だった。サウザーはそこは彼女をうまく育てられなかったと振り返り、レポートに書かれている彼女から2年後の彼女を語った。しかし、ずーっと気にかけているサウザーがステキだった。
その後はグループ討議。ボクのグループは7人で語った。ボクもサウザーもやや語りすぎの高教組病だったので時間があまりなかったけれど、このグループ討議で自己紹介と学校の校則にまつわる話を聞くのはめちゃくちゃおもしろかった。たぶん、酒と場所があれば一晩語り合えただろう。青年部の会議でもないのにボクより若い先生しかいない先生たちと話をしたのは初めてかもしれない(笑)。転勤していきなり生徒会を担当したAさんは、校則改定に生徒会が踏み出して、より厳密な校則が出来上がり、身だしなみ検査を「生徒会が校則を変えたんだから執行部が検査する」という状況になっていることを語ってくれた。これには正直たまげた。「うまくいかなくなる可能性もあるから、その時は軌道修正できる準備が必要ですね。」とだけしゃべった。統合校のBさんは、2校の生徒会の伝統や生徒指導の伝統のはざまで難しさを抱える実態を報告してくれた。こちらの高校は市民的な教養を生徒に培ってもらうような校則の在り方に変更したようだが、2校のすり合わせと、教員の意識の違いに悩んでいた。どんなルールを作るかよりも、議論の過程に意義があるだろう。3年担任のCさんは、生徒が細かいルール違反をチクってくることに悩んでいた。「あの人はヘアピンの色が校則違反だよ」と言ってくるらしい。「ボクが全部の校則の細かいルールを把握していないといけないんです」といっていた。こうしたことに悩む初めて担任をする若い先生に、いじめや望まない妊娠など、「命にかかわることだけ気にしていればいい」と言ってあげられる先輩はいないのか。若い先生の休職者数は年を追うごとに増加している。ベテランも自分のことで手一杯になり、若い先生を守れない職場が増えているのだろう。こういう先生にこそ組合に入ってほしい。自分の学校には相談できる先生はいなかったとしても相談できる仲間がたくさんいる。この先生の気持ちを思うと一緒に泣きたくなった。
最後にグループごとの報告もあって会は終了。青年部のH先生の呼びかけで企画された学習会。流れも最高だった。そしてその若者の呼びかけに答える人たち、一緒に悩み学びたいという人たち。そんな人が集うステキな学習会だった。
終わりのあいさつをしたDさんは、「こういう学びあいができる組合のすばらしさを感じながら今日は運転してきました」と語った。そういうDさんは転勤した年なのに7科目19時間という授業をもち、教務部長をすることになったらしい。転勤一年目で無茶にもほどがある。ボクなら北斗神拳を食らって「お前はもう死んでいる」と言われても不思議ではない業務量だと思う。そんな中でテストを作らないといけないところで力を振り絞って学びに参加してくれたDさんにも敬意を表したいし、まず自分をいたわってほしいと思った。
良い余韻に浸り、サッポロクラシック富良野VINTAGEを飲みながら帰途につく。いい時間をくれたHさん、ありがとう。写真は日高山脈。(11月23日)