2022年6月15日

北海道高等学校教職員組合連合会

全北海道教職員組合

 北海道教育委員会(以下、道教委)は6月7日、「公立高等学校配置計画案」(2023~25年度・以下「高校配置計画案」)と2022年度の「公立特別支援学校配置計画案」(以下「特別支援学校配置計画案」)を発表した。今回の「高校配置計画案」には、2025年度に穂別高校を募集停止、岩見沢・富良野両市内の高校再編統廃合、さらに深川東高校、室蘭工業高校での1学級減、留萌高校の職業学科を単位制にするなどの案が示されている。

 これらの提案は、「これからの高校づくりに関する指針」(以下、「指針」)が示す「望ましい学校規模」に固執するもので、地域の高校を大切にしてほしいという道民の願いを受けて、抜本的に見直すことを強く求めるものである。

 

1.地域の声を尊重し、説明責任を果たせ。留辺蘂高校・穂別高校募集停止には断固反対する

 5月に全道各地で行われた「第1回地域別検討協議会」では、指針の見直しを求める声が地方の首長・教育長や保護者からよせられた。特に地方の学校を守れという声は強く、オホーツク中地区においては昨年発表された留辺蘂高校の募集停止の決定を撤回する要望が相次いだ。道教委は「地域の意見・要望は道教委幹部まで共有している。持ち帰って検討する。」としていたが、その舌の根も乾かぬうちに昨年と同じ募集停止を提示した。また、穂別高校の募集停止は、進路選択の幅を狭めるだけではなく、遠距離通学によって経済的、身体的負担を増やすことになり、道教委の案はむかわ町穂別の子どもたちを含む住民の声を十分に聞いたとはいえない。7月に開催される第2回協議会では、道教委は当事者である子ども・保護者・地域の意見を尊重し、「指針」に固執しない柔軟な検討をすすめるべきである。同時に、「子どもの権利条約」をいかす立場から、生徒会などを通じて、「配置計画」への子どもの意見表明の機会を保障することもあわせて求める。

 

2.道教委の「多様化・特色づくり」「高校の魅力化」の破綻がいよいよ明らかになった

 道教委は一貫して総合学科や単位制、フィールド制などの「多様化・特色づくり」を学校に押しつけ、学校存続をかけて競わせてきた。しかしながら、昨年の「総合学科」留辺蘂高校の募集停止に続き、今年度は残っていた「フィールド制」を全て転換するという案を提示した。これはまさに子どもの「興味・関心」「進路希望」に名をかりた安易な「特色づくり」の破綻を意味している。道教委が「指針」を検証し見直すのであれば、「多様化・特色づくり」「高校の魅力化」とその押しつけを猛省することが先決である。それもないまま国が進める普通科新学科を導入することは同じ失敗を繰り返すことになりかねない。道教委は学校の存続をてこにした「多様化・特色づくり」の押しつけを直ちにやめ、各学校の主体的な教育課程づくりを支えるための教育条件整備をすべきである。

 

3. 機械的な計画策定と急な募集学級数の変更は現場に混乱を招き、働き方改革に逆行する

 また、道教委は「中学生の進路選択に十分な検討時間を確保する」ため3年間の計画を策定するとしていながら、配置計画案では20もの学校において次年度の学級数を計画決定時に公表としている。昨年度計画決定時には9校で10学級が減とされており、各学校は設置科目・選択科目や部活動などの教育課程の見直しをすることになり、中学校3年生とその保護者の進路選択のために実施した学校説明会の教育課程からの変更を余儀なくされた。募集学級数減は全校において少なくとも1年先延ばしするべきである。

 各高校では感染拡大要因が多い環境の中で、複雑で予測困難なコロナ対応を迫られ、新指導要領の実施における観点別評価や「GIGAスクール構想」への対応も加わり大きな負担となっている。多くの教職員が異常な労働環境にさらされながら教育を行っている状況において、コロコロと学級数が変更する配置計画を提示することは、現場を混乱させ働き方改革に逆行するものである。募集定員に満たない場合にあっても教員数と学級数を維持し、可能な学校から順次少人数学級を実現するべきである。

 

4.特別支援学校設置基準の制定を踏まえ、教室不足解消も含めた配置計画の策定を求める 

 昨年9月24日に制定された「特別支援学校設置基準」は、「児童・生徒数の上限」「備えるべき特別教室などの施設・設備」「通学時間の上限」が規定されないなど、教室不足解消と教育環境改善という制定の趣旨に照らすとあまりに不十分と言わざるをえないものであった。とはいえ、設置基準は、そこで学ぶ子どもたちの教育条件改善の足がかりにしなければならず、とりわけ教室不足解消は喫緊の課題である。しかし今回の「特別支援学校配置計画案」には、高等部の学級数の増減は示されているものの、小中学部も含めた教室不足解消に関する計画について一切触れられていない。昨年の設置基準公布の際、文科省は各教委に対して教室不足解消の計画、いわゆる「集中取組計画」の策定を行うことを要請しており、教室不足に関する文科省調査(2022年3月公表)に対し道教委は「計画有り」と報告しているが、実態として具体的なものは何ら示されておらず、「集中取組計画」も踏まえた配置計画を早急に策定すべきである。

 昨年の道内特別支援学校の不足教室数は106教室、特別教室の転用、教室の間仕切りなど工夫して対応しているという実態が明らかとなった。しかも調査時点(2021年10月調査)で、2024年度までに教室不足の解消が計画されているのが2教室にとどまるなど、問題が放置されていると言っても過言ではない。

 道教委は、今後の見通しとして「既存施設等の活用による対応を検討」と、これまでと変わらない配置計画の方針を示しているが、「既存施設への詰め込み」はやめ、本来あるべき単独校舎による新増設の計画を示すべきだ。この後も当事者の声、学校の実態をよく踏まえ、特別支援学校の過大・過密の解消、小中学部も含めた教室不足解消の道筋を明らかにするとともに、狭隘化・教室不足が深刻な自治体との連携をはかりつつ、それらの早急な実行を強く求めるものである。

 

5. 20人学級こそが教育の希望 「高校配置計画案」を撤回し指針の抜本的な転換を求める

 道教委は1から3学級の小規模校の統廃合の理由として「教育課程の編成や部活動に制約がある」「生徒同士が切磋琢磨する機会に乏しい」としているが、それらの理由を超えた存在意義が小規模校にはあると指摘する教育研究者も多くいる。この間、地域別検討協議会では多くの自治体や参加者から「入学式には下を向いて返事もせず自信のなかった子どもが前を向いて卒業していった」「中学校に行けなかった生徒が毎日高校に行き最終的に社会に出て行くようになった」など、小規模校ならではの教育効果を訴える声、さらには「財政問題を教育に持ち込むな」「少人数学級を実現せよ」という声が上がっている。

 日本の子どもたちは、幸福度をはかるユニセフの調査で、精神的な幸福度が38か国中37位であり、自己肯定感が極めて低い。私たちはこれまでも教育効果の観点から小規模校や少人数学級の優位性を訴えてきたが、この状況において、ゆきとどいた教育ができる少人数学級は大きな希望である。

 現行「指針」に基づく「高校配置計画案」の策定は最終年を迎え、進行中の「指針」の改定では、これまでと変わらず「40人学級」「1学年4~8学級を望ましい学校規模」とする方向で議論されている。一方で小学校では35人学級が進んでおり、「高校配置計画」も、その流れに即したものとなるよう、例えば、現在50校以上存在する1学年1学級の高校は、道独自で20人学級とするなど、北海道の実態を踏まえた現実的な少人数学級への転換が求められている。

 子どもたちと教職員の笑顔、北海道の未来のために道教委は教育条件整備に全力をあげるよう改めて強く求める。また、私たちも「えがお署名」にとりくみ、20人学級の実現、特別支援学校の過大・過密解消、教職員の長時間過密労働の解消を文科省に求めていく。