JR北海道は一週間のマヒを余儀なくされた先日の大雪だけでなく、何度も帰宅難民を生み出すような運休が相次ぎました。国鉄民営化はこのような結末になるのだと感じたのはボクだけではないでしょう。ここ高教組にも、そういう労働運動の時間の流れを感じさせてくれるようなことがありました。
それは我々高教組と道教委では「定員・予算交渉」が行われたときです。その第2回のまとめで松野修江副委員長が道教委に語りました。15分ほどの時間でしょうか。その言葉の1つ1つは道教委に向けられたものですが、私たち後輩にも「よく聞いときなさい」と感じさせてくれるものでした。組合活動というのはうまく言い表せませんが、やはり「思い」が繋がっていくものだなとこの時に思いました。私たち本部役員もここでお仕事をするのは数年ですが、こうして先輩の意志を受け継いでいくもんだなと・・・。道教委との歴史的交渉経緯、46協定一方的破棄に到る不誠実な対応、そして行き詰まった教育行政。それが時間軸とともに語られました。
一緒にいた菱木書記長もボクも、そして道教委もその言葉に聞き入っていました。本当は声がなければ臨場感が伝わりませんし、とても長い話でしたので文字にするととても長くなります(その場にいればあっという間でしたが)。ですが、その思いの一部でも伝わればと思い、ここに掲載することにします。写真は我が家で制作中のかまくらです。
「教員が望むものは何よりも自由な時間」
「欠員の解消は喫緊の課題」と先ほどおっしゃいましたが、2020年1月24日教育長交渉でも同じ回答をしました。さらに2018年1月の定員・予算等交渉において、「教員の長時間勤務の解消は喫緊の課題」と教育長が回答しています。 「喫緊」とは、「さしせまって重要なこと」「対処や行動をすぐにでもしなければならない状態」なのにもう4年!! 超勤解消については、4年どころかずっと以前から、交渉の課題となっていますが、解消どころかより深刻になっていると言わざるを得ません!
なぜこうなっているんでしょうか。それは、何の手立てもないまま、私たちと結んだ「協定書」を一方的に破棄したからです。
「協定書」は1971年、4%の教職調整額支給と引き替えに、教員には原則時間外勤務は命じないとする給特法および「給特条例」の施行にかかわり、地公法第55条にもとづく交渉の結果、「誠意と責任をもって履行しなければならない」として締結された合意書です。
「協定書」は教職員の勤務の特殊性、研修の重要性も考慮しつつ、教職員の時間外勤務の取扱いの厳格な適用を主な内容とし、労働時間と賃金という最も重要な労働条件に係るものとして、実際の必要性と有用性に支えられ、30年間の長きにわたって実効性を発揮してきました。
私が、1980年代教員になって先輩に言われたことです。「夏休み・冬休みはいろいろな研修をして、休み明けの授業に生かすための期間」。当時は1年単位の変形労働時間制などなくても、自分で自由にものを考える自由な時間があったのです。「先生は夏休み冬休みがあっていいね」とも言われ、「教員のなり手がいない」などのことは想像もつきませんでした。「協定自体がこれまで学校運営に重大な不都合を生じさせたという話は聞かない」(北海道新聞)と報道されたように、なんら学校運営に支障をきたすことなく学校職場に定着していたのです。
しかし道教委は2001年、地方公務員法で性格を持つ「協定書」の一部破棄を、2008年には全面破棄を提示しました。膨大な時間外労働を解消する具体的かつ実効ある政策を示すことが「協定書」に係わる交渉の前提であり、先行されるべきことであるという組合の主張に対し、「重要な課題である」との認識は示しつつも、交渉過程で具体策を何ら提出することなく「協定書」廃止を強行しました。
このことは、地公法にもとづいた「協定書」の履行責任を果たさないばかりか、教育職員の深刻な労働実態、健康及び福祉を顧慮しないきわめて不当な態度が今も続いており、そのツケがまわってきていると言わざるを得ません。だから「喫緊」と言いつつ解決できないです。
「協定書」第9項には「教職員の超過勤務を解消し、教職員定数を抜本的に改善し、必要とする定員を確保するようつとめるとともに付ずい的業務を整理し、勤務時間の短縮をはかるように努力する」と書かれていました。この廃止理由を道教委はこう述べました。「行政の企画・立案に関する事項は管理運営事項であり、教育委員会が自らの判断と責任において処理すべきものであることから、表現・内容が不十分又は不適切である」。明らかに勤務条件にかかわることについて、「管理運営事項」を盾に現場教職員の代表である組合の関与を排除する不当な姿勢が、この時も、そして今も貫かれています。
協定書破棄の理由は「管理運営事項」と「法の趣旨を損ねる」「締結後の制度改正」「社会情勢の変化」などあいまいなものでしたが、今の学校の勤務実態は「法の趣旨を損ねる」どころか「違法状態」以外の何物でもありません。あまりにブラックな働き方に、若者は教職を敬遠し、学校内の中堅層は教頭になりたがらないではありませんか。協定書を破棄して管理統制を強めた結果、学校は良くなったのでしょうか? 「教育委員会が自らの判断と責任において処理すべきもの」と言いつつ、無反省に所定の労働時間では終えることのできない量の業務を、時間外手当を払わずに教職員に押しつけてきただけのではないでしょうか?
そんな道教委に欠員の解消などできるのでしょうか? もっと当事者、つまり現場の教職員の声、それらを集め練り上げた組合の要求に真摯に耳を傾けながら、協定書などこれまでの知恵や工夫も見直し生かすことが必要です。
また、「社会情勢の変化」を言うなら、コロナ禍のもとでさまざまな矛盾があぶりだされ、学校も教育行政も今こそ大きな転換点にきています。
超勤の問題についても、20年前は「命じていないのだから時間外の勤務はない」としていたのが、2020年には「在校等時間」という概念で、「校務として行われる業務については、時間外勤務を命じられていないとしても学校教育活動に関する業務であることに変わりはない」とされました。
持ち帰り残業は労災法上で「労働時間」とみなされる判断もあり、道教委でも把握せざるをえずいつまでも「命令していない」「在校等時間に含まれない」と無視することは許されません。
超勤を抜本的に解決するには「定員」と「教育予算」を増やすことですが、コロナ禍のもとでも儲かっている大企業にお金はあっても、自治体にはお金がなく、そう簡単ではないことは理解しています。だからおカネも人もつけられないなら、休暇や勤務の割振りなどで時間を返せ、という要求もしていますが、道教委の回答は「国や他府県の動向から困難」がほとんどです。
しかし道独自で17年にわたり独自の賃金削減をやってきました。今回も国に先んじて一時金は削減するとしました。不妊治療休暇(出生サポート休暇)は国にならって今年1月から実施したが、もともといくつかの自治体で先行していた制度を国が取り入れたもの。北海道でも賃金削減以外に独自でできる「良い」こと、予算を伴わずにできる改善はいくらでもあるはずです。労働環境を少しでも改善するため、「国準拠」や「縦割り意識」による思考停止に陥らないよう、現場の職員の声を聴き、知恵を出し合い、北海道の独自性を踏まえた大胆な発想の転換が今こそ求められているのではないでしょうか。
今回は我々の要求の一部についてやりとりしたましが、教職員が今いちばん望むものは、何より「自由な時間」です。
人には寿命があり1日は24時間、労働者にとって「最大の富は自由な時間」。
少しでも自由な時間を得られるように、道教委が「自らの判断と責任において」知恵をしぼってください。
「富」である自由な時間を教職員に保障し、創造的な仕事ができるようにすることが子ども・生徒たちのためであり、北海道の教育水準の維持向上につなげてください。
最終交渉に向け真摯に検討することを強く求め、本日の交渉を終わります。
協定書
国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する「特別措置法」にかかわる条例の施行について
1971年12月15日
北海道教育委員会教育長 岡村 正吉(shokichi okamura)
北海道高等学校教職員組合連合会中央執行委員長 中神 凡夫 (yosio nakagami)
標記の件について地方公務員法第55条にもとづく交渉の結果、次の通り文書協定をおこなう。
記
1 この条例の施行は、労働基準法の精神をふまえて、教職員の勤務改善のための措置である。
2 変形時間労働制は行わない。
3 教職員には原則として超過勤務を命じないものとする。
4 教職員に超過勤務をもとめる場合は、次にかかげる業務に従事する場合で臨時又は緊急にやむを
得ない必要がある場合に限るものとし、教職員の健康状態、繁忙の度合いなどを考慮し、かつ、教
職員の意向を充分尊重する。
なお、この場合には実情に応じて勤務軽減その他適切な措置を講ずるとともに特殊勤務手当につ いては引き続き交渉する。
(1)生徒の実習に関する業務、生徒を直接対象とする実習指導で農業の実習における家畜の分娩、 天候の急変による作物の管理、水産実習における乗船実習に限る。
(2)学校行事に関する業務、修学旅行(見学旅行、宿泊研修)に限る。
(3)教職員会議に関する業務、全教職員が参加する会議で、非常災害など緊急に必要なものに限る。
(4)非常災害に関する業務、非常災害及び生徒の人命に関わる場合に限る。
5 学校行事は原則として日曜、休日においては実施しないものとする。なお日曜および休日に勤務
をもとめる場合は、代休措置を講ずるものとする。
6 自発性・創造性がきわめて強く要請される教職員の勤務の特性にかんがみ、その勤務の扱いは次 の通りとする。
(1)教職員が授業の準備・整理・研修及び生徒指導に関する業務を行う場合は、校長の承認のも とに勤務時間内であっても学校外に勤務することができる。この場合、校長の恣意にわたらぬ よう充分指導し趣旨の徹底をはかる。
(2)夏休み、冬休みなど、長期の休業期間については次の通りとする。
イ 教育基本法及び教育公務員特例法第19条・第20条の規定により、原則として校外研修日 とする。
ロ 校外研修に際しては、所定の手続をへて事前に研修項目と居場所をとどけでるものとする。
ハ 帰省、スクーリング、海外研修などは、前項(ロ)と同じ扱いとする。
ニ 教職員の各種研修会、研究会等への参加については、主催者により差別しない。
ホ いわゆる日番勤務については廃止の方向で今後交渉を継続する。
ヘ 行政職員及び海事職員については、教職員に準じた扱いをする方向で更に交渉を継続する。
7 以上のこととかかわって教職員に超過勤務をもとめる場合は地方公務員法第55条にもとづき、当 該職場の教職員との交渉によって行うものとする。
8 この条例の施行にともなう通達等については、教職員組合の意向を充分反映して発するものとする。また勤務条件にかかわる学校管理規則等の改正については、教職員組合との交渉で行う。
9 教職員の超過勤務を解消し、教職員定数配置を抜本的に改善し、必要とする定員を確保するよう
つとめるとともに付ずい的業務を整理し、勤務時間の短縮をはかるように努力する。
10 教職調整額の支給にかかわり既存の特殊勤務手当をうちきることなく、その拡大・増額をはかる よう努力する。
11 クラブ活動の指導にともなう勤務の取扱いについては、引き続き交渉する。
12 市町村立高等学校における勤務の取扱いについては、道立高等学校に準じて措置するよう市町村 教育委員会を指導する。
13 本条例の施行をめぐって問題が生じた場合は教職員組合と交渉してこれを解決するものとする。
以上