【声明】 「共謀罪」法案の強行採決に断固抗議する
6月15日朝、自民・公明の与党等は、参院法務委員会での採決を省略し、本会議で「共謀罪」を可決させるという強行採決を行った。多くの欠陥を抱える同法案を、まともな審議もせずに、まして是正することもなく、7割が「今国会で成立させる必要がない」という国民の声をよそに、決着を急ぎに急いだ与党の強引さ、参院委員会の審議権、採決権まで奪った国会軽視の姿勢に断固抗議する。加えて、国会は森友学園や加計学園問題等をめぐる疑惑や混乱の最中にあって、その解明が急がれるにもかかわらず、国会延長による追及をかわすための身勝手な国会運営との誹りを免れることはできない。
「共謀罪」法案は、準備・計画段階での処罰を可能にする、「既遂処罰」が原則の刑事法の体系を大きく変える法案だが、政府は国際組織犯罪防止条約の締結に必要とし、その必要性を声高に主張していた。しかし、一般人が警察の捜査対象となり、監視社会に道を開く懸念を払拭できておらず、参院では対象犯罪を大幅に絞り込むなど法案の抜本修正も含めた対応、さまざまな不安を払拭する十分な議論を国民は求めてきた。
政府は、法案が適用される「組織的犯罪集団」について「一般人は対象にならない」との説明を繰り返したが、環境保護団体でも「隠れ蓑」と見なされ、集団の構成員でなくても関係のある「周辺者」と捜査機関が判断すれば、逮捕・処罰の対象となることが明らかになり大問題となった。これまで警察は任意捜査と称し、一般市民への違法な盗撮や情報収集を行っており、そのことに全く無反省な態度をとり続けている。ここに277の犯罪が「共謀罪」で加われば、人権侵害の捜査を正当化させ、えん罪の大きな温床となりかねない。何が罪に問われるか分からない、判断するのは警察の一存というのでは、罪刑法定主義を根本から揺るがすことになる。まして、日常的な国民監視が行われる可能性も否定できず、そのことが国民の諸権利を侵すことになりかねない。プライバシー保護などの幸福追求権(憲法13条)、思想及び良心の自由(同19条)、集会・結社・表現の自由、通信の秘密(同21条)を保障した憲法と真っ向から対峙することになるが、国会議論を通じて、その不安は収まるどころか高まるばかりだ。
テロ対策のため、国際犯罪組織防止条約締結のためという口実も完全に崩れていて、国連人権理事会が任命した特別報告者から、「共謀罪」によるプライバシーや表現の自由が侵害されるという警告に耳を貸そうとすらしない異常さも際立っている。
政府は審議に当たって「できる限り分かりやすい説明を心がけたい」と国民理解を協調していたが、国民が解明を強く求める森友学園・加計学園疑惑は説明しようとせず、国民が不安だ、おかしいと指摘している「共謀罪」は国会議論を打ち切って押し通すという、まさに政権の強権ぶり、暴走政治の体現であり、到底認めることはできない。
自衛隊による南スーダンPKO派遣、米艦防護など安保法制の実行に踏み出している首相は、憲法9条の明文改憲に踏み込み2020年に施行と期限まで切って「戦争する国」づくりの完成を目指している。「共謀罪」はまさにその一環であり、国民の政権批判の声、憲法を守りいかせの声を押さえ込もうとする意図は明白である。私たちは、政権の横暴な国会運営、憲法蹂躙の政治姿勢を強く批判するとともに、「特定秘密保護法」「安保法制」とともに、この「共謀罪」の廃止を求めて広範な市民と運動をすすめていく決意を表明するものである。
2017年6月15日
北海道高等学校教職員組合連合会
全北海道教職員組合