北海道教育委員会は6月6日、「公立高等学校配置計画案」(2018~20年度)と「公立特別支援学校配置計画案」(2018年度)を発表しました。
「高校配置計画案」では、今年度の新たな計画に、2019年度、私立江陵高校の募集停止にともない幕別高校を2学級増とし、私立江陵高校の校舎を使用することが発表され、また、上ノ国高校と雄武高校の地域キャンパス校化、室蘭工業高校は情報技術科を、北見商業高校は商業科をそれぞれ学級減することが示され、2020年度の高校配置計画案では24校25学級の大幅な学級減が発表されました。
 「新たな高校教育に関する指針」(以下「指針」)に基づいた機械的な高校配置計画に反対し、子どもや教職員、保護者・地域の願いを反映した計画に今すぐ見直すことを求める「声明」は、下記の通りです。
2018配置計画「声明」(WORD)

2018配置計画「声明」(PDF版)
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教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす「配置計画」の見直しを求める
~「公立高等学校配置計画案」(2018~20年度)、2018年度「公立特別支援学校配置計画案」に対する声明~
2017年6月7日
北海道高等学校教職員組合連合会
全北海道教職員組合

1.はじめに
北海道教育委員会(以下、道教委)は6月6日、「公立高等学校配置計画案」(2018~20年度。以下「高校配置計画案」)と「公立特p別支援学校配置計画案」(2018年度。以下、「特別支援学校配置計画案」)を発表した。
「高校配置計画案」では、今年度の新たな計画に、2019年度、私立江陵高校の募集停止にともない幕別高校を2学級増とし、私立江陵高校の校舎を使用することが発表された。また、上ノ国高校と雄武高校の地域キャンパス校化、室蘭工業高校は情報技術科を、北見商業高校は商業科をそれぞれ学級減することが示された。2020年度の高校配置計画案では24校25学級の大幅な学級減が発表された。
本道の公立学校の統廃合は2002年から15年までの13年間で688校(小学校463校、中学校153校、高校72校)と全国最多で、2位の東京(285校)を大きく上回っている。「総合学科」や「単位制」などいわゆる「新しい高校づくり」によってつくられた学校が軒並み学級減となり、「本来の目的」であったはずの多様な生徒の希望に合った教育課程づくりが難しくなっているが、未だその検証さえなされていない。
私たちは、「新たな高校教育に関する指針」(以下「指針」)に基づいた機械的な高校配置計画に反対し、子どもや教職員、保護者・地域の願いを反映した計画に今すぐ見直すことを求めるものである。

2.子どもや地域、学校現場の要望を生かす高校配置計画を求める
 2017年4月から5月にかけて「第1回地域別検討協議会」が全道各地で行われた。首長や教育関係者、保護者の代表であるPTA関係者などが出席したが、「機械的に削減するのではなく、基準を緩和するなど柔軟な対応を」「道独自でかつては特例2間口の取り組みもできていたのだから、工夫しながら間口を守る取り組みを独自で進めてほしい」「30人や20人学級が実現すれば、それで救われる高校もあるはず」など、学校個々の実情に応じた切実な声が多々あった。しかし、それらの意見は配置計画案に反映されることなく、「指針」通りの「高校配置計画案」が発表された。拙速な学校規模の縮小や急激な単位制への移行は教育現場に混乱をもたらすだけである。更に、学級減は教育課程の変更・縮小を学校に迫り、また専門学科における学級減は生徒の進路選択にも直結しかねない。道教委の言う「多様な生徒のニーズに応える」ためにも、地域の実情に応じた、子どもの学習権を担保した高校配置計画の見直しを強く求めるものである。
 7月には第2回地域別検討協議会が開催されるが、形だけの意見集約にとどまらず、これらの意見を具体的に「計画」に盛り込むことを強く要望する。

3.十分な教育条件整備を反映した特別支援学校配置計画を求める
 2018年度の特別支援学校の配置計画案について、訪問学級は知的障害と肢体不自由を合わせて13学級39人の定員増の計画としている。養護学校義務制実施(1979年)以前、障害を理由に就学猶予・免除となり学校教育を受けられずに高齢となり、施設内や在宅で訪問教育を希望している人も多く存在する。そのような中、大幅な学級増の案を示したことは一定評価できるが、今後も、希望するすべての人が教育を受けられるよう訪問教育の学級確保を求めるものである。2017年度、道南圏に北斗高等支援学校、道央圏にみなみの杜高等支援学校が開校した。いずれも寄宿舎の併設はない。高等支援学校の新設では、2009年度開校の小樽高等支援学校を最後に寄宿舎を併設しておらず、道費によるスクールバスの運行もない。しかも、ここ数年で新設された学校は統廃合された空き校舎や空き教室を転用している。できる限り身近な地域の、通学可能な学校配置とすることを基本に、新設校の寄宿舎併設、道の責任によるスクールバス運行、生徒の実態に合わせた十分な施設設備改修など、多様な教育的ニーズに対応するための条件整備がいっそう必要である。道教委は、今後の見通しとして、2019年度は道南圏に2学級、釧根圏に3学級、2020年度に道北圏に3学級程度の学級増の見通しを示している。これら学級増を行う上で十分な予算措置を講じることを求めるものである。 

4.経済性・効率性重視から、地域の声を生かした「指針」への見直しを求める
2006年に「指針」が出されて以降、38校の高校が閉校し、そのうち18の自治体から地域唯一の高校が無くなった。私たちは、高校統廃合や学級数削減が教育の機会均等、地域づくり、子どもたちの将来に大きく影響することから、「指針」の見直しを強く要求し続けてきた。道教委は来年3月を目処に「新たな指針」をつくることとしている。私たちは「ゆきとどいた教育」をすすめるために、首長や教育長と懇談を重ねているが、「まちづくりの担い手になる子どもたちの健全育成こそ命題」「地域の子どもにとって複数の学校や学科を選択できるような配置にしてほしい」などの願いから、自治体は貴重な財源を道立高校に通う生徒に使い、交通費の全額補助や資格試験の受験費補助、給付型奨学金など、できる限りの努力をしている。「地域の子どもたちの教育は地域で保障する」ことは、憲法や子どもの権利条約が保障している当然の権利であり、本来は設置者である道や国が保障すべきである。道教委はこれらの地域の切実な要望に応え、新たな指針の見直しに生かすべきである。

5 教育の機会均等実現こそ、道教委の果たすべき第一義である
 高校配置や特別支援学校の新増設は、教育予算の充実と密接に関わる問題である。日本の教育の公的支出(対GDP比)はOECD加盟国でも最低レベルであり、道は国に対して予算増額の要望をあげるとともに、各自治体の努力を無駄にしないためにも、北海道の広域性等を鑑みて、道独自でも教育予算を増やし、教育の機会均等をはかるべきである。
学校統廃合問題は、子どもたちの教育の問題であることはもちろん、未来の北海道の姿を考える上で重大な問題でもある。私たちは教育予算の増額、国による少人数学級の前進、教育費無償化などの前進を求める「全国教育署名」に全力でとりくむとともに、「ゆきとどいた教育」を求める全道的共同をいっそう広げ、大きく運動をすすめていく決意である。