本日7月15日、安倍政権は「戦争法案」(安全保障関連法案)を衆議院平和安全法制特別委員会(浜田靖一委員長)で採決を強行した。民主・維新・共産3党は強引な運営に反発し採決に加わらなかったが、自民・公明両党の賛成多数で可決し、衆議院本会議での採決を目論んでいる。
特別委員会では採決に先立ち、締めくくり質疑が行われ、首相自身「残念ながらまだ国民の理解がすすんでいる状況ではない」と答弁しているように、本法案は審議を重ねれば重ねるほどその違憲性が明らかになり、それを政府自身が明瞭に説明できない事態が続いていたなかでの採決強行は、国会議論の軽視であり、立法府としての責任を放棄する蛮行と言わざるを得ない。
昨年7月1日の集団的自衛権を行使できるようにした閣議決定について、安倍政権は1957年の最高裁「砂川事件判決」、1972年政府見解をもって、歴代政権が行使できないと禁じてきた憲法解釈を変更したが、憲法審査会で憲法学者3人がそろって「違憲」としたことについて何ら明確に説明責任を果たしていないし、実質的な憲法解釈を一内閣が憲法に則った手続きを経ることなく変更することへの説明も果たしていない。政権自体がこの法案を合憲と説明できていないのは明らかであり、そもそも本法案は、いつでも、どこでも、米軍などの先制攻撃(侵略戦争)に自衛隊を戦闘地域で活動できるようにするものであり、明らかに憲法違反である。
こうした政権に対する国民の不信や怒りは内閣支持率の逆転にも見られるとともに、直近の全国紙・世論調査では「安保法案は説明不足」との回答が8割を超え、「今国会での成立」に否定的な意見、「廃案にすべき」という意見が、賛成・賛同する意見を大きく上回り、全国463にのぼる地方議会では昨年7月以降、「慎重審議」「廃案」を求める意見書が採択されている(北海道新聞7月11日)。国会前では連日、「戦争法案」に反対する市民が全国から駆けつけ声を上げている。また、各地でも廃案を求める大小の集会やデモ・パレードが連日行われ、法案採決の強行は許さないと老若男女を問わず声を上げている。
わたしたち教職員も「全国教職員投票」(全日本教職員組合の提起)によって、「戦争する国ではなく、憲法9条をいかし平和を広げる国を子どもたちに手渡したい」意思を結集して、学校を卒業した子ども、これから卒業していく子ども、その父母・保護者や地域に、本法案の廃案を求める決意を明確にしている。
現憲法は、先の戦争による国内310万人、国外2000万人ともいわれる犠牲の上に、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」制定された。2014年衆院選挙での1票の格差について「違憲状態」という判決が12高裁・支部で出されているなか、本法案の採決強行は、現憲法を二重の意味で覆すものであり、立憲主義、民主主義の否定につながりかねない、まさに愚行と言わざるを得ない。
こうした政府の行いに満身の怒りもって抗議するとともに、わたしたち教職員は「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンの認識を新たに、本法案の廃案を求めて今後も運動をさらに広げていくことを決意するものである。
2015年7月15日
北海道高等学校教職員組合連合会
全北海道教職員組合