これまで、何人かの校長に何度か教頭試験を受けないかと言われたことがある。組合員からも「毎日のように誘われます」なんてメールも入ったし、校長会にとっても管理職の確保が大きな課題らしい。きっとみなさんも同じように「管理職にならないか」と誘われているのではないだろうか。私たちだって「組合に加入しないか?」と言っても決意してくれる人はそう多くないから、校長たちの気持ちもわからないではない。しかし、私たちとは組合費という身銭を切っているのか、管理職手当をもらうのかの大きな違いがある。お金を餌にしてもなり手がいないのだからどれだけ魅力が無い状態に陥っている仕事なんだと思う。

 校長さんから管理職に誘われたときに「そうとう道教委はおかしいと思いますよ。そんな中で仕事ができますか?」というと、「君みたいな人が組織を変えていくんじゃないかな?」とおっしゃる。それで決め台詞を吐く。「校長先生、だって今の文科省・道教委は子どもたちのためといいながら、自分たちの保身ばかり。末期の江戸幕府の状況とよく似ていますよ。江戸幕府は勝海舟だって変えられなかったじゃないですか。」というと勝海舟がわからないのかもしれないけれどあきらめてくれる。ちなみに校長さんと話すと、よく「私は道教委に仕える身だから…」などという。この意識が強くなると、「全体の奉仕者」であるにも関わらず思考停止に陥り、公共の利益になるのか?と思える道教委の通達にも従順になる。たとえば自分の学校が統廃合になるときも町の人や生徒の立場に立たず、道教委の方針には絶対に反対しない。アイヒマンに共通するところがある。

 これから数ヶ月間、人事委員会・道教委と交渉の時期に入る。交渉で道教委は答えに窮すると「管理運営事項」を持ち出す。例えば、「ICT支援員の配置は管理運営事項なので、勤務条件とは言えない。だから交渉事項から外します」とこんな感じだ。まるでそこには科学的ではない線引きがされる。御印籠をかざせば「ハハー!」とあきらめるだろうという感じだ。

 そのたびに「これは『征夷大将軍』ならぬ『誠意無い将軍』だな」と感じるのだ。

 ボクが専従3年目として感じている道教委の「三種の神器」を紹介しよう。

 ①例えば「ICTを使ってコロナの生徒にも授業をせよ!」「いじめアンケートをICTで取りなさい!」「観点別評価をしなさい!」「授業時数を確保せよ!」など、アクション・プランの対象とされていないことで業務が増えているのに、壊れた機械の様に「長時間労働はアクションプランによって解決してまいる」とのたまう『アクション大魔王』。

②校務遅延システムと揶揄される校務支援システムやICTの導入で明らかに業務が増えているのに、ICTで働き方改革までしようとする『デジタルトラブルフォーメーション』

③そして管理運営事項を振りかざす『誠意無い将軍』

 どうだろう。うまく表現できているのではないだろうか。

 今日、日本の教員給与がOECDの平均を下回ったという報道がされ、OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は「教職の魅力を高め、教員の質を高めることが重要」と指摘した。

ただでさえ長時間過密労働の中で教員不足が生じ、学校は融解がはじまっているという専門家の指摘もある。実際に現場からも悲鳴の様な声が聞こえてくる。

子どもたちのためには教職員が元気でなければならない。

交渉で「北の国から」でカボチャを目の前にした菅原文太の様な台詞は吐きたくない。

この文章を読んでいる道教委の人もいると聞く。一人一人は誠意のある人たちばかりだ。組織としても誠意ある対応をお願いしたい。