2023年6月13日

「道立学校におけるいじめアンケート漏洩」問題に関わる談話

 

 道教委が専門のシステム管理者を一人も配置していないことが原因

~現場の教職員に責任を転嫁することは許されない!~

 

北海道高等学校教職員組合連合会 書記長 道端剛樹

全北海道教職員組合 書記長 川村安浩

 

 北海道教育委員会は9日、道内の公立小中・高校や特別支援学校で行った「いじめアンケート」で、道立学校2校で設定ミスにより44人分の回答が他の在校生や保護者らに閲覧できる状態になっていたと発表し謝罪した。重大な個人情報の流出であり、当事者である生徒の不安を考えると、道立学校全体への信頼を損ねる重大な事態である。

 なぜこうした事態が起きてしまったのか。教育現場からは、近年、道教委が主導し、急速にICT機器の活用が進められる中で、情報管理上の危険性を指摘する声が上がっていた。今回の事態の一番の大きな要因は、ネットワークエンジニア(ICT支援員)が行うべきシステム管理を、多忙を極める各校の情報担当者(教員)が行っているという事実である。

 国が4校に一人のICT支援員配置を予算化しているにも関わらず、昨年度の北海道のICT支援員の配置は、全国の都道府県でも46番目であり、さらに道立学校(道立高校・道立特別支援学校)ではICT支援員を一人も配置していない。私たち教職員は教育の専門職であり、システム管理の専門職ではない。多忙極める教員がシステム管理を行えば、ヒューマンエラーが起きるのは当然である。報道では、道教委は「インターネットで行うアンケートの設定マニュアルを作成するなど再発防止に努める」としているが、必要なのは設定マニュアルを作成して徹底させることではなく、専門のシステム管理者(ICT支援員)を配置することである。

 現在、2021年度の全国小中学校の不登校の児童・生徒数は過去最大の24.5万人となり、教員は平均月96時間(2022年全教勤務実態調査)もの残業を抱えている。児童・生徒の願いは、年数回、機械的に行われる「いじめアンケート」よりも、「友達関係や家庭での悩み」「学習の悩み」などを安心してゆっくり話を聞いてくれる教職員の存在であり学校ではないのか。

 2022年全教勤務実態調査によると、教員が最も減らしたい業務は「教育委員会などに提出する資料や統計、報告書の作成」が際立っており、もっと時間を掛けたいことは「授業学習指導」「学習指導以外の子どもの指導」である。私たち教職員の願いは、子どもと一緒に過ごす時間を増やす事なのである。

 道教委は対処療法的な再発防止策ではなく、少なくとも国基準でのICT支援員の配置を早急に実現し、そして教職員が子どもと向き合える学校にするための条件整備を進めるべきである。