学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を抜本的に見直すとともに、学校現場の実態に基づき、実効ある超勤解消策を早急に講じることを求める
道教委は、「2020(H32)年度末までに、1週間当たりの勤務時間が60時間を超える教員を全校種でゼロにする」ことなどを目標に設定した、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」をまとめ、3月28日の教育委員会会議で決定するとしている。具体的な取組として、①本来担うべき業務に専念できる環境の整備 ②部活動指導にかかわる負担の軽減 ③勤務時間を意識した働き方の推進と学校運営体制の充実 ④教育委員会による学校サポート体制の充実 の4つのアクションを掲げ、道教委や学校は、各学校や地域の実情を踏まえ具体的な取組を行うとした。
しかしながら、中学校の51.1%、高校の36.5%の教員が「過労死ライン」を超えて働いている状況について、その原因分析が全くなされておらず、原因がわからないままのプランでは、解決の方向性が見いだせるはずがない。また「取組の方向性」について、「教員が業務の質を高めるとともに」との記載があるが、超勤解消を業務の質の問題に転化するなどもってのほかである。我々が今年度実施した「働き方改善アンケート」では、部活動休止日の設定や割振り変更制度の活用など、道教委の時間外勤務縮減重点取組みについて、高校の7割、中学の8割が「効果的なものはない」と回答しており、寄せられた声からも道教委の施策が、現場の実態とかい離していることは明らかである。以下、「アクション・プラン」の問題点を指摘する。
action1では、「チーム学校の実現に向けた専門スタッフ等の配置促進」について示されている。人格と人格のふれあいを軸とする教育活動において、子どもにかかわる全ての教職員が情報を共有し、合意をつくっていくことが不可欠であり、教員の専門性を制限されることにならないか懸念される。「ICTを活用した授業準備等の支援の充実」については、そもそも授業準備の時間が足りておらず、必要なのは授業準備の効率化ではなく、授業時数の上限設定や授業準備に専念するための体制づくりである。「コミュニティ・スクールの推進」については、そこに関わる諸会議への参加が、更なる多忙化をまねている現状がある。「給食費の徴収・管理業務の負担軽減」については、「事務職員等に業務移譲」するとしているが、事務職員の多忙化も問題となっており、業務移譲するのであれば事務職員の増員などが必要である。
action2では、「部活動指導に関わる負担の軽減」について示されている。「休養日は週1日。土日の休養日は月に1日以上」という基準が掲げられているが、現行の「部活動指申しわせ」を踏襲したものにすぎず、スポーツ庁が示した「平日1日以上、土日1日以上の週2日以上」とするガイドラインとは大きな隔たりがあり、部活動指導の負担軽減は期待できない。スポーツ庁指針とのかい離について道教委は、「部活動関係者団体と、今後議論していく」としているが、その場しのぎの対策では、現場は混乱するだけである。「部活動指導員の配置」については、地域によって配置が可能なのか疑問である。全道的な配置となるよう、充分な予算措置を行うとともに、部活動指導員の労働条件整備を十分に行うことが必要である。スポーツや文化活動に親しむ場、生徒の自主的な活動を保障し、また放課後の居場所づくりとして、部活動を否定するものでないが、勝利至上主義のもと、教員のボランティア精神で成り立っている部活動の在り方については、見直しが必要である。
action3では、「勤務時間を意識した働き方の推進と学校運営体制の充実について」示されている。「取組状況を管理職員の人事評価に反映する」としているが、管理職による労働管理強化やハラスメントなどにつながる危険がある。「学校閉庁日の設定」については、年末年始の休業はすでに実施されており、お盆前後には多くの教職員が休みをとっており、超勤解消に大きく結びつくとは考えられない。また、年休や休暇の取得を前提としているが、年休をいつ、どのように、どのぐらい取得するかは各人の権利である。新たな休暇で補償するなどして、全員が確実に休むことができるような制度とする必要がある。「勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムの構築」については、働き方への管理強化が強まり、持ち帰り残業の増加などが容易に予測される。あくまでも「労働者の保護」が目的であり、教職員の教育上の自主的権限や専門性が最大限尊重しながらも、客観的に把握されたデータをどのように超勤解消につなげていくか、見通しを示す必要がある。
action4では、「教育委員会による学校サポート体制の充実」について示されている。「勤務時間等の制度改善」の割振り変更業務については、書面上は割振りで休みとなっているが、実際は勤務している「空割振り」の実態がある。長期休業中にも割振り変更が可能となるよう、制度改善が必要である。「学校行事の精選・見直し」については、授業時数の確保が過度に強調されるなか、文化祭や合唱コンクールなど生徒の自主性を育てるための大切な学校行事が削られている。2月9日の文科事務次官通知にも示されているように、「標準授業時数を大きく上回った授業時数を計画している場合には、指導体制の整備状況を踏まえて精査すること」、「地域が主催する行事と合同開催するなど、効果的・効率的な実施の検討」「教科等との関連性を見直し、積極的に当該教科等の授業時数に含めること」などが先決である。
以上のように、道教委が掲げた「アクション・プラン」は、具体的な取組に必要な予算措置については何ら示されておらず、また現場の実態や要求とかい離しており、実効ある超勤解消に結びつくとは到底考えられない。また、ILO勧告第116号「労働時間短縮」には、「権限ある機関は、この勧告の適用に関する諸問題について、最も代表的な労使団体と協議する慣行を確立すべきこと」と規定されているにもかかわらず、教職員組合の代表を入れずに検討している「アクション・プラン」に大きな期待を持てるはずがない。学校現場の実態に基づき、①教職員のいのちと健康を守る、②どの子にもゆきとどいた教育を保障するための条件を守る、という2つの観点を重視しながら「アクション・プラン」を抜本的に見直すとともに、教職員定数増や少人数学級実現など、実効ある超勤解消策を早急に講じることが求められる。
加速化する長時間労働の背景には、安倍「教育再生」のもとですすむ、過度な競争主義教育と、管理・統制の教育がある。「全国学テ」や少数エリート育成を目的とする文科省指定事業や改訂学習指導要領の押しつけなどにより、教職員の労働負荷はさらに増大している。
教職員の過酷な働き方が社会問題となり、教員を目指す学生も減少している。病休や育休の代替教員が確保できず、全道的に「教育に穴が開く」実態が深刻になっており、憲法で定められた教育の機会均等を脅かす問題にもなっている。
「子どもとふれあい時間がほしい」「授業準備の時間がほしい」。これが全道教職員の切実な願いである。教職員がゆとりをもって笑顔で子どもたちと向き合えるよう、35人学級の実現を含めた教職員定数の抜本的改善、教員1人当たりの授業時数の上限設定、長時間労働の歯止めとなっていない給特法の改正はもちろん、休暇の拡大や部活動指導における負担軽減など、道高教組・道教組は引き続き、保護者・地域と共同し、勤務条件・教育条件整備の運動を広げていくことを改めて決意する。
2018年3月22日
北海道高等学校教職員組合連合会
全北海道教職員組合