拙速で場当たり的、見通しのない「配置計画案」は撤回し、道教委は教育条件整備の責任を果たせ
~「公立高等学校配置計画案」(2020~22年度)、2020年度「公立特別支援学校配置計画案」に関する声明~
2019年6月7日
北海道高等学校教職員組合連合会
全北海道教職員組合
1. はじめに
北海道教育委員会(以下、道教委)は6月4日、「公立高等学校配置計画案」(2020~22年度。以下「高校配置計画案」)と2020年度の「公立特別支援学校配置計画案」(以下「特別支援学校配置計画案」)を発表した。
「高校配置計画案」では、2021年度に伊達高校と伊達緑丘高校を統合、2022年度に5つの学校をそれぞれ1学級の増としたほか、釧路市立釧路北陽高校のフィールド制を見直し、普通科単位制を導入するとしている。さらに2020年度から羅臼高校(募集学級が1学級の場合)に地域連携特例校を導入するとしたほか、福島商業高校の再編を留保する案を示した。
「特別支援学校配置計画案」では、2020年度に職業学科設置の知的障害高等部を計4校で4学級32人の増としている一方、義務校併設の知的障害高等部は4学級22人の減としている。合わせて、苫小牧市内での特別支援学校新設が発表された。
2. 学校現場の実情を顧みない早急な高校統廃合案を撤回せよ
道教委は、2018年度に決定した高校配置計画を変更し、2021年度に伊達高校と伊達緑丘高校の統合の案を示した。2018年度の配置計画では、2021年度に伊達緑丘高校を4学級から3学級に学級減とすることが示されていた。道教委は「これからの高校づくりに関する指針」(以下「指針」)において、3学級以下の高校を再編整備の対象とされているが、こうした機械的な学級減が、今回の統合の引き金となっていることは確実である。
また、2年後の2021年度の統合はあまりにも学校の実情を無視した拙速な案だと言わざるを得ない。学校を新設するにあたっては、新しい学校の理念、校名、教育目標、教育課程編成など学校づくりの根幹をはじめ、校歌・校章、単位制の教務内規、学校行事など特別活動の見直し、校舎の改築など、両校で議論すべき課題は枚挙にいとまがない。超勤が常態化している学校現場において、わずか2年足らずの準備期間での開校など、想像を絶する事態である。また、現在両校の1学年に在籍する生徒にとっては、急激な配置計画の変更によって、2年後の2021年度には、入学時とは異なる教育条件の下で学校生活を送ることになる。道教委は当該生徒・保護者に対し、どのように説明責任を果たすつもりなのか。たとえ地元からの要望があったとしても、私たちは、学校の実情や生徒・保護者の願いを顧みない機械的な高校統廃合に反対する。
さらに、地域連携特例校の福島商業高校については、「地域における、高校の教育機能の維持向上に向けた具体的取組とその効果を勘案し、再編整備を留保する」としているが、「留保」などという高圧的な姿勢ではなく、無条件で学校の存続を保障すべきである。
道教委は「高校配置計画案」を撤回し、子どもや保護者・地域の願いに基づいた学校配置となるよう再考することを求める。
3.場当たり的な学級増減を撤回し、見通しをもった学級数の設置を
道教委は、2022年度、5校で7学級から8学級へ学級増を行う案を発表した。しかしながら、そのうち4校は、2020年度に学級減となる計画であり、2020年度から2022年度の間に、8→7→8学級と増減を繰り返すことになる。年度ごとに教職員定数は変わり、その都度校務のあらゆるところで見直しを図る必要があるばかりか、教育課程の見直しを余儀なくされることもある。こうした単年度の場当たり的な学級数の増減は、学校の運営に重大な支障をきたすおそれがある。よって、これらの4校については、2020年度の学級減を中止すべきである。
また、道教委は、2020年度に24校25学級、2021年度に15校15学級、2年間で39校40学級を削減するとしている。しかし、これらの学校の大半は定員をほぼ満たしており、学級減とする理由を見いだすことは難しい。「地域の小規模校を守る」ことがその理由とも考えられるが、2019年度高校入学者選抜の2次募集後に学級減となった学校は26校に上り、少子化の下では今後も4月当初に「自然減」となる学校が増えることが予想される。国基準の「40人学級」と「望ましい学校規模」に固執している限り、この矛盾は解決されることはない。北海道の「教育の機会均等と教育水準の維持向上」、そして「地域創生」のためにも、道教委は「指針」を見直すよう求めるものである。
4.新設校の開校を含め、特別支援学校に十分な教育条件整備を
苫小牧市内での特別支援学校新設は、東胆振地区における特別支援教育の多様な学びの場の保障という点では、一定評価できるものである。しかしながら、小学校の空校舎の活用であり、重度の知的障害児の在籍も想定されることから、発達段階や障害の実態に合わせた施設設備の十分な改修が必須である。
特別支援教育がスタートしてから12年、特別支援学級・学校の在籍者は増加の一途をたどっている。道教委は計画案の中で、「増加がやや緩やかになってきた」としているが、小学部・中学部・高等部が併設された特別支援学校の狭隘化はいまだに深刻である。また、解消策として実施されてきた空教室や閉校校舎の活用など既存施設の開校では、「トイレが足りない」「パニックなどの時、落ち着ける部屋がない」など、実態に合わせた条件整備が不十分という声が多数ある。とりわけ、近年すすめられている生徒が在籍している高校での併設は、特別支援学校の生徒にとっては、本来あるべき単独校舎に比べ不十分な条件整備となり、当該の高校に通う生徒にとっても大きな教育条件の変更であることは明らかであり避けるべきと考える。狭隘化の解消は急務であるとはいえ、少なくとも、「特別支援学校配置計画」や「高校配置計画」で示し、関係者の意見を聞くなど幅広い議論を経ることが必要である。道教委は、十分な予算を確保することはもちろん、在籍する生徒や保護者の意見を踏まえ、透明性のある議論に基づいた配置計画を示すよう求めるものである。
5.北海道の未来のため、教育の機会均等を実現する施策へ
第1回地域別検討協議会においても、「北海道は広域なので、国とは違う考えが必要。北海道独自に、4~8学級の望ましい学校規模と1学級40人定員を見直すべき」との意見が述べられている。学校統廃合問題は、子どもたちの教育の問題であることはもちろん、北海道の未来を考える上で重大な問題である。「指針」に示される「1学年4~8学級を望ましい学校規模」とすることに、何ら学問的な根拠はない。また、学級規模においても、北海道の広域性を考えれば、北海道独自に少人数学級を実現させるべきだ。また、特別支援学校の狭隘化は喫緊の課題であると同時に、その解消は新校舎の設立など十分な教育条件を整備して行うべきである。
既に「指針」は破綻している。道教委は、「指針」を撤回するとともに、全道一律の基準で学級減や統廃合をすすめるのでなく、それぞれの地域の願いや実態に基づいた学校規模を考えるべきである。私たちは、教育の機会均等を求めて、教育予算の増額、国による少人数学級の実現、教育費無償化などを求める「教育全国署名」に全力でとりくむとともに、「ゆきとどいた教育」を求める全道的共同をいっそう広げ、大きく運動をすすめていく決意である。