教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす「高校配置計画案」の撤回を求める
~「公立高等学校配置計画案」(2019~21年度)、2019年度「公立特別支援学校配置計画案」に対する声明~
1. はじめに
北海道教育委員会(以下、道教委)は6月5日、「公立高等学校配置計画案」(2019~21年度。以下「高校配置計画案」)と2019年度の「公立特別支援学校配置計画案」(以下「特別支援学校配置計画案」)を発表した。
「高校配置計画案」では、2021年度に南幌高校を募集停止するほか、女満別高校と東藻琴高校を統合し町立の新設校の設置、滝川高校など16校17学級の学級減、苫小牧工業定時制の学科再編を新たに示した。また、2019年度に夕張高校と松前高校に「地域連携特例校」を導入すること、2020年度には深川東、函館工業など5校で学科を再編するなどを示した。
「特別支援学校配置計画案」では、2019年度に職業学科設置の知的障害高等部を、道央圏で7学級56人の減、道南圏と釧根圏では5学級40人の増、道全体では2学級16人減とする一方、義務校に併置の高等部を5学級35人の増としている。
今回の「高校配置計画案」で、新たに統廃合や募集停止の対象となったのは、いずれも地域の小規模校である。私たちは一貫して小規模校が地域に果たしている役割を訴え、その存続を求めてきた。地域の高校の統廃合は、そこで暮らす子どもたちの教育の機会均等を保障する観点からも決して許されることではない。私たちは、「高校配置計画案」を撤回し、子どもや保護者・地域の願いに基づいた学校配置となるよう配置計画案の再考を求める。
2. 道教委は、子どもや保護者・地域、学校現場声の声を聞いた高校配置計画を策定せよ
4月から5月にかけて「第1回地域別検討協議会」が全道各地で行われた。自治体の首長や教育関係者、PTA関係者などから、「地域の中に高校が存続することで町が活性化される」「高校生が市民を励ます存在となっている」「少人数だからできる取組もあり、地域の実情、地域のニーズに応えるということが、これからの高校づくりで大事なことではないか」など、高校が地域に果たす役割の重要性が訴えられた。しかし、これらの意見は配置計画案には全く反映されていない。
道教委は子どもや地域住民、学校現場の要望に耳を傾ける用意があるのか大変疑問である。学校がなくなることの地域に与える影響の大きさを、真摯に受け止めているとは到底思えない。
これから第2回目の地域別検討協議会が開催されるが、子どもや保護者・地域、学校現場からあがる切実な要求に耳を傾け、これらの意見を盛り込んだ「計画」を策定することを、改めて強く求めるものである。
3. 地域の高校の存続は道の責任。小規模校が地域に果たす役割を再認識せよ
私たちは「北海道教育キャラバン」を通じ、道内自治体を訪問し、首長や教育長と懇談を続けている。懇談では「まちの子どもはまちで育てる」「高校生は地域の子どものリーダー」「まちづくりの担い手になる子どもたちの健全育成こそ命題」など、地域の中で高校や高校生が果たしている役割の大きさが語られた。今回、南幌高校の募集停止が示されたが、南幌町は、南幌高校存続のため、入学祝い金や通学費、資格取得や進学への補助、海外研修の補助など、厳しい財政状況をやりくりして子どもたちの教育をすすめており、「学校はまちづくりの根幹として必要」と教育長は語っていた。
女満別高校・東藻琴高校の統合校の町立移管は、厳しい町財政の中でも高校を残したいという町の信念の表れであり、本来道が責任を持つべき地域の高校の存続を、町が肩代わりしているという構造は否めない。
さらに、地域連携特例校6校について、再編を「留保」するとしているが、「留保」などという高圧的な姿勢ではなく、無条件で学校の存続を保障すべきである。また、松前高校には次年度新たに地域連携特例校を導入し、函館市内の統合新設校を協力校にするとしている。しかし、函館・松前間は90キロ以上離れていることに加え、統合により様々な課題が山積みの中での連携は、学校現場に余計な負担や混乱をもたらすものと言わざるを得ない。
道教委は、高校や高校生が地域に果たす役割の大きさを改めて認識し、住んでいる地域によって子どもの教育の格差が生じないようにすることはもちろん、高校の灯を消すことで、過疎化に一層の拍車がかかることがないよう、地域の高校の存続のために全力を尽くすべきである。
4. 新設校の開校を含め、特別支援学校に十分な教育条件整備を
法制上、特別支援教育がスタートして11年、北海道における特別支援学校の在籍者数は約1300人増加し、道内の特別支援学校は62校から72校へと増設された。しかしながら、新設校の多くが寄宿舎やスクールバス運行のない単置の知的障害高等部であり、自力通学が可能、もしくは保護者の送迎を前提とした学校の設置ばかりである。一方、義務併置高等部は、在籍者が2倍近くに膨れ上がっているにもかかわらず、伏見支援学校1校のみの新設に留まっている。学級増に対しては、校舎の増改築も行われているが、併設された小中学部に通う児童生徒の増加も加わり深刻な教室不足となっている。一つの教室を間仕切って使用したり、特別教室を転用したりするなど、児童生徒の安全や教育の機会均等が脅かされる事態である。
道教委は、今後の見通しとして、2019年度は、旧函館稜北高校校舎を利用して、新設の特別支援学校を開校、釧路鶴野支援学校に3学級の増、2020年度に、道央・道北・オホーツク・十勝で学級増の見通しを示しているが、義務併置高等部の見通しについては、まったく示されていない。早急に、義務併置校の教室不足を解消するとともに、これら学級増を行う上で十分な予算措置を講じ、新設校の開校を含め、生徒の実態に合わせた十分な施設設備改修など、教育条件整備をすすめるべきである。
5. 北海道の未来のため、教育の機会均等を実現する施策へ
高校配置や特別支援学校の新増設は、教育予算の充実と密接に関わる問題である。日本の教育の公的支出(対GDP比)はOECD加盟国の中で最低であり、道は国に対して教育予算増額を強く要望するべきである。また、必要な予算は国の動きを待たずに道独自で措置すべきだ。
学校統廃合問題は、子どもたちの教育の問題であることはもちろん、北海道の未来を考える上で重大な問題である。そのためには、「1学年4~8学級を望ましい学校規模」とする「これからの高校づくりに関する指針」を抜本的に見直し、全道一律の基準で統廃合をすすめるのでなく、それぞれの地域の願いや実態に基づいた学校規模を考えるべきである。
私たちは、教育予算の増額、国による少人数学級の実現、教育費無償化などを求める「教育全国署名」に全力でとりくむとともに、「ゆきとどいた教育」を求める全道的共同をいっそう広げ、大きく運動をすすめていく決意である。
2018年6月6日
北海道高等学校教職員組合連合会
全北海道教職員組合