【声明】 人事異動に関わって“組合加入の有無”を校長に尋ねる、道教委の違法な調査・不当労働行為に断固抗議する

~違法調査は直ちに中止するとともに、教職員組合を「教育政策の決定に関与すべき勢力(ユネスコ)」と認めた教育行政となるよう求める~

 

 人事異動協議の場において、人事担当者が校長に対し、異動希望の全教職員を対象として“組合加入の有無”を確認している事実を北海道教育委員会が認めた。教育長は道議会で「誤解が生じることがあってはならないことから、今後見直しを行う」と答弁したが、これら違法・不当な調査は以下に述べる重大な問題が含まれている。

 

1.組合加入の調査は、憲法、労働組合法、地方公務員法などに反する不当労働行為である

 憲法において労働基本権が保障され、労働組合法7条、地方公務員法56条において「組合員であることを理由とする不利益な取いは不当労働行為」と規定されている。組合への加入の有無をもって人事異動に影響が及ぶことは、明らかな不利益扱いであり、またそれらを通じて組合活動への参加を委縮させる行為は支配介入にあたる。それらは、2012年に大阪市が行った「労使関係に関する職員アンケート調査」が、大阪府労働委員会によって不当労働行為と認定されたことからも明らかである。

 

2.組合の加入の有無について、情報収集すること自体許されない

 「調査はパーソナルデータの一環」と道教委は言開きしているが、必要な情報は人事調書に全て記載されている。厚労省は「労働者の個人情報保護に関する行動指針」において、個人情報保護との関係で、企業は原則として、思想・信条、労働組合への加入の有無等を収集してはならないと定めている。同じく厚労省発出の「公正な採用選考の基本」でも、労働組合の加入状況の把握は就職差別につながるとし、職安法第5条の4・平成11年告示第141号においても、労働組合への加入状況等の個人情報を収集してはならないとされている。

 

3.組合加入は、個人の思想信条・プライバシーに関わる問題である

 私たち道高教組は「いい教育をしたい」という願いと、「安心して働き続けたい」という要求と、その両方を大切にして運動をすすめており、組合員は、子どもたちの豊かな成長のために、教育研究活動や教育条件の改善、教職員の労働条件改善などにとりくんでいる。一方で、組合に加入しているか否かは思想・信条の自由、プライバシーに属することであり、NPO 日本ネットワークセキュリティ協会による「情報漏えいが起きた場合に、個人が被る精神的、経済的なダメージ」では、「加盟労働組合」の漏えいは、「加盟政党」や「政治的見解」と同じ、最も高いレベル3の「精神的苦痛」として示されている。本人の同意を得ずに収集された情報が漏えいされることへの精神的苦痛は甚大であり、憲法13条で保護されたプライバシーの権利、憲法19条で保護された思想・信条の自由を侵害する行為である。

 

 

 道教委は違法調査の目的を「教職員の関連情報の一部として把握」とし、「組合加入の有無をもって、人事異動に影響しているということは一切ない」と言うが、「影響がない」なら、“組合加入の有無”を尋ねる根拠を欠く。教職員の人事異動について教育委員会へ意見を具申する権限は校長にあり、組合加入の有無を人事異動の判断基準とされた可能性は否定できず、「誤解が生じる」で済まされる話ではない。私たちは、道教委の違法な調査・不当労働行為に強く抗議するとともに、全教職員に謝罪し再発防止策を講じること等を求めるものである。

 また、このような非違行為の背景には、道教委の旧態依然とした反組合的体質があり、それは教職員の言動を封じ込め、教育活動を委縮させる意図をもつ「情報提供制度」の運用を続けていることからも明白である。

 教育諸問題について、私たちが自由かつ率直に意見を表明し、校長や道教委はその意見を知ることによってこそ、相互の意思疎通が図られ、職場の民主化とゆきとどいた教育が実現されることは疑う余地がない。道教委は、「教員団体は、教育の進歩に大きく寄与しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない(ユネスコ;教員の地位に関する勧告)」の立場で、民主的な教育行政をすすめるべきである。

 道高教組は、引き続き、広範な労働者との共同・連帯をすすめながら、働くものの生活と権利をまもり発展させるとりくみを強めていくことをここに表明する。

 2017年12月5日

                                                 北海道高等学校教職員組合連合会

【声明】 人事異動に関わって“組合加入の有無”を校長に尋ねる、道教委の違法な調査・不当労働行為に断固抗議する